安藤さんがくれたチョコレイトケーキと杉原の優しさ
Ads by Google
2月14日水曜日 晴れ。
朝まあまあ混んでいる時間帯に電車に乗った。座れずに立っていた。目の前に座る女子高生が膝に抱えている紙袋の中に、大量のお菓子が入っているのが見えた。顔をのぞかせたお菓子達はどれもこれも甘そうなものばかり。なぜじゃがりこが入っていないのか?不思議でならなかった。もしかしたら紙袋の底に埋まっているのかもしれない。話しかけようかとも一瞬思ったが、話しかけた時点でなんらかの犯罪になるかもしれないと思い直し、黙って窓の外を眺めることにした。そして少ししてから思い当たった。今日はバレンタインデーだ。と。
物心がついてから20数回目のバレンタインデーである今日。おれはついに、一つもチョコレイトを貰うことができなかった。これは自慢であり、自嘲でもある。
高校一年生の時のバレンタインデーをおれは未だに忘れることができない。
放課後、部活が終わって寮に戻ろうとしていたら、木の陰から安藤さんが目の前に現れた。安藤さんは三年生の女の子だった。
安藤さん「これ、良かったら食べて」
おれ「ああ、ありがとうございます」
安藤さん「たくさん貰ってて食べれなかったら、捨ててくれても良いから」
おれ「いや、頂きます。ありがとうございます」
安藤さん「受け取ってくれてありがとう」
おれ「安藤さんが作ってくれたんですか?」
安藤さん「うん。まあね」
安藤さん「じゃあ、またね」
安藤さんはそのまま女子寮の方に走って去った。
寮に戻ってシャワーを浴びた後、おれはまず安藤さんから貰った箱を開けた。
するとホールサイズのチョコレイトケーキと、小さな白い封筒に入った手紙のようなものが添えられていた。
チョコレイトケーキを一瞥し、白い小さな封筒を覗いた瞬間に、全身を鳥肌が覆った。
何やら、束ねられた毛が、その中に見えたからだ。
おれはその白い封筒をゴミ箱に捨ててからチョコレイトケーキを持って、隣の部屋の杉原のところに行った。
おれ「杉原これあげる」
杉原「え?良いの?」
おれ「うん。もうお腹いっぱいだ」
杉原「モテ男はいいねえ。でも一口くらい食べないと感想も言えないだろ?」
杉原は優しい男なのだ。
おれ「確かに。じゃあ杉原が感想教えて。今食べて」
杉原「おお」
杉原「うん。おいしいよ。そんなに甘くない」
おれ「え?てことは苦いの?大丈夫?」
杉原「いや、苦くはないよ。甘いけど、甘ったるすぎないってこと。ちょーどいい」
おれ「そうか。良かった」
杉原「これ全部食べていいの?」
おれ「うん。良いよ」
おれはその後自分の部屋に戻り、25時に再び杉原の部屋をこっそりと訪れた。そして杉原の寝息を確認した後に、おれもゆっくりと眠りについた。
エレベーターで乗り合わせたマダムに行き先の階を聞いてボタンを押してあげた。おばさんとマダムの境界線は一体どこなのだろうか?一日一善。第106善。ごちそうさまでした。
昨晩の体重76.9kg
朝 6個100円のクリームパン
昼 エビマヨ手巻き寿司
夜 ごはん、鶏肉の甘辛焼き、もやしとシーチキンの和え物、ジャガイモの味噌汁
ジャガイモの味噌汁のジャガイモの形が良かった。スライスされていて、とても食べやすかった。
一日三膳。ごちそうさまでした。
スターを頂けたなら歌います。ブックマークを頂けたなら踊ります。読者になって頂けたなら脱ぎます。おれの自己紹介