とりあえずビールをやめようと思う

金曜日の夜、嫁には仕事だと言っておきながら、酒を飲みに行ってしまった。申し訳ないと思う。

おれはそこで普段は飲まない生ビールを飲んだ。生中というやつだ。家に帰り着いたのが24時15分。そこまではなんともなかった。嫁が寝室から顔をのぞかせて「晩ご飯冷蔵庫にあるから、チンして食べて」と言ってくれたことに対して、罪悪感が増す余裕すらあった。

おれは冷蔵庫の中の晩ご飯を無視して、シャワーを浴びた。シャワーから上がると、なんとなく頭痛がすることに気がついた。だからすぐに眠った。しかし、夜中の3時過ぎに頭が痛くて目が覚めた。娘のかわいい寝顔を見たら、この痛みも忘れられるかなと思い娘の寝顔を見るも、何の効果もなし。

そして立っているのも辛くなっていることに気がついた。しかし横になるのも辛かった。次に気がついた時には、おれは洗面所いた。そして鏡で自分の顔を見つめていた。自分の顔を見るのを辞めたかったのだけれど、首を動かすことはおろか、視線を動かそうとするだけで頭の痛みが増した。だからそのままおれはしばらくの間自分の顔を見つめ続けることを余儀なくされた。

立ったまま自分の顔を見つめ続けていると、次第に足の感覚がなくなっていった。そしておれは洗面所で尻餅を着いてしまった。とりあえず自分の顔を見つめ続けなくて良いことに安心したが、頭痛は相変わらずしっかりと頭の中に居続けた。でも視線を動かすことができるまでに回復していることに気がついたので時計の方に目をやると、もう朝の5時前になっていた。途中吐き気のようなものもしたが、吐くには至らなかった。

5時になったところで、体をゆっくりと頭に響かないように注意しながら動かして、ベッドまで戻り布団に入ろうとしたが、体を横にした時に、また頭痛がした。もしかしたらこのままおれは死ぬのかもしれないと思った。そんなことを考えながらおれはいつの間にか眠ってしまっていたのか、気絶してしまったのかはわからない。目を覚ますと、時計は7時を指していた。とりあえず目が覚めたことに安心した。

おれはビールが昔から苦手だ。日本酒を飲んで頭痛がしたことはない。でもビールを飲むと何故か頭痛がする。

おれは多分もう一生ビールを飲むことはないだろう。

だが、日本には「とりあえずビール」という謎の習慣が存在する。おれはこれに真っ向から立ち向かおうと思う。

おれはこれから「とりあえずコーラ」にする。

時には「え？飲まないの？」的な空気に晒されるかもしれないが、その後に待ち受ける頭痛を考えたなら、そんな空気、痛くも痒くもない。これから忘年会シーズンだ。なるべく出ない方向で調整していこうと思う。そうすれば、「とりあえずビール」に出くわす回数も減るし。

それにしても「とりあえずビール」どういう意味なんだろうか？

何が、とりあえず、なのだろうか？考えれば考えるほどわからなくなる。

「まあ、そんなことどうでも良いじゃん。さ、さ、とりあえずビール飲もう」ということなのだろうか？だとしたら、やはりおれには「とりあえずビール」を受け入れることはできない。

とりあえずビールをやめようと思う。

11月15日水曜日　曇り。

会社の廊下に落ちていたガムテープの切れ端を拾ってゴミ箱に捨てた。一日一善。第90善。ごちそうさまでした。

今朝の体重76.1kg