一日一善と三膳

一日一善と三膳を通して世界とおれを幸せにする

写真の持つ力

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今日ふと、佐伯先生の名前をグーグルで検索した。すると、そこには50代になった佐伯先生の写真が出てきた。画質が悪く、拡大すると表情の細かなところはぼやけてしまってよく見えなかった。冗談ではなく、おれはモニターに近づいて見たり、遠ざかってみたりしながら何度も佐伯先生の表情を見た。一つだけわかったことは、ショートカットをやめて、ロングにしているということだけだった。

 

最後に佐伯先生と会ったのは、おれがまだ18歳で、先生が36歳の時だった。先生の運転してくれる車に乗って、ダムに行って、バッティングセンター近くのカラオケに入ったのを覚えている。その前に先生と会ったのは、おれがまだ11歳で、先生が29歳の時だった。離任式の日は雨が降っていて、体育館の床が湿気で滑りやすくなっていた。渡り廊下のところで先生が抱きしめてくれたのを覚えている。

 

そして、33歳の今日、おれは佐伯先生に15年ぶりに会った。

先生は相変わらずきれいで、他の先生たちと並んでいる写真を見ていると、一つだけ大きさの合っていないそろばんの珠を見ているような気分になって、なんだか落ち着かない。

 

おれはパソコンの画面を見るのをやめて、席を立ち、煙草を吸うためにエレベーターに乗って外に出た。深呼吸をしながら、18歳だったあの日に起きたことを少しだけ思い出していた。