一日一善と三膳

一日一善と三膳を通して世界とおれを幸せにする

口紅のついた煙草のフィルター

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昨日のつづき

 

「ごめんね、スクランブルになっちゃった」と言う沙織さんの方に目をやると沙織さんの後ろに一人おばさんが立っていて、さっきのおじさんと似た笑顔をしていた。「二郎くん、いらっしゃっい。昨夜のことは覚えてる?」「覚えてないです」「お母さんそれよりフレンチトースト焦げないように見てて」おばさんは沙織さんのお母さんで、おじさんは沙織さんのお父さんだった。

 

それから木製のテーブルに4人で座って朝食を食べた。「沙織が初めて作った朝ご飯なのよ」とお母さんがおれを見ながら言った。おれは甘いフレンチトーストを口に入れた。卵がたくさんの朝食だなと思った。

 

朝食を食べ終えるとおれは食器を下げたついでに、洗おうとした。でもお母さんが「お客さんなんだから、座ってて。沙織は外で煙草吸ってるわよ」と言ってくれた。炊飯器にAM9:08と表示されていた。

「遅くまで沙織さんと遊んでてごめんなさい。それに突然お邪魔して朝食まで頂いて」「気にしないで。沙織と遊んでくれてありがとう」とお父さんと同じことをお母さんも言った。

 

リビングの外のウッドデッキで沙織さんは煙草を吸っていた。おれの頭の中には前の晩由紀さんの車の中でかかっていた中島美嘉の「雪の華」が流れていたけど、恐らく休日の午前9時には相応しくないBGMだなと思った。

 

沙織さんは白いタンクトップにジーンズをとても短く切ったものを履いていた。灰皿にはピンク色の口紅のついたフィルターが一つだけ入っていた。

 

 

無駄に引っ張りたくないのに娘が泣き出したので今夜はここまで