金属の冷たさ
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佳純が成田空港まで一緒についてきてくれた。ゲートをくぐる直前に佳純は泣き出した。おれは黙って佳純を抱き寄せた。
"公共の場でこういうことはしたくないな。それに一月も経てば、違う男の子と仲良くなって、おれのことなんて忘れてしまうのに。いや、責めてるわけじゃないんだ。おれだって多分そうなんだから"
そんなことを考えながらしばらく佳純を抱きしめて、おれはゲートをくぐった。佳純は泣きながらも顔をあげて手を振ってくれていた。おれも手を振ったが、金属探知機が鳴った。
おれはポケットを探った。右後ろのいつも空っぽにしているはずのポケットに手を入れると、ひんやりと冷たい感触がした。
おれはそれを手に取り、20代前半くらいのかわいい保安員の女の子に手渡した。
「これなんですか?」
「鼻毛カッターです」と真顔で答えた。
保安員の女の子は笑った。おれも笑いたかったが、ゲートの向こうで泣いている佳純を尻目に笑う訳にはいかなかった。
鼻毛カッターは優実が持たせてくれた。どんな状況でも鼻毛が出ているような男にだけはならないで、と優実はおれに言った。でも鼻毛カッターは結局一度も使われることなく、成田で没収されてしまった。
8月24日木曜日 晴れ。
今日は帰りに家の近くの公園で暗い中目を凝らしてゴミを拾った。ビニール袋を持ち歩いていると善行が無限ループできる。
一日一善。第65善。ごちそうさまでした。
今朝の体重75.2kg
朝 ドトールBモーニング
昼 おいなりさん、旨辛チキン、もちチーズいも
夜 キャベツ、鶏の唐揚げ6個
一日三膳。ごちそうさまでした。気がつけば鶏ばかり食べている。おれはチキン野郎ではない。違う。
(執筆時間42分)