一日一善と三膳

一日一善と三膳を通して世界とおれを幸せにする

あの日教室には良い女が二人と、良い男が一人いた

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外出先でおっきな便意を催した際に、他の人はどうしているのだろうか。気になるが、知る術がない。

 

だからおれと同じように思っている人のために、おれがどうしているか、教えてあげようと思う。

 

おれは便座と足が接する部分にトイレットペーパーを敷いている。おれは別に潔癖ではない。机の上に転がってしまった給食の磯辺揚げは食べる。と言ったところで思い出した。

 

ある日、給食当番だった梢ちゃんがコロッケを一つ落っことしてしまった。黒板の下に。だからコロッケには白いチョークの粉がたくさんついてしまった。でも運良くその日は健人が休んでいた。

 

でも残念なことに、健人のコロッケじゃんけんを楽しみにしていた男子達は落胆した。梢ちゃんは、男子達に向かって「ごめんね、みんな」と言った。梢ちゃんは間違いなく、今良い女になっているはずだ。

 

でも今日はここでは終わらない。

 

梢ちゃんが「ごめんね、みんな」と言って、男子達が自分の机に戻る中、おれは幸彦の目を見ていた。そして幸彦の目は白くなったコロッケを見ていた。

 

みんなが机について、山中先生が「それではみなさん、いただきます」と言った。そしてみんなは思い思いのことを話し始めた。いつもの教室の風景だ。おれはずっと隣の島の幸彦を見ていた。そして、いただきます、の合図から2分くらいが経った頃、幸彦が動いた。だが誰も幸彦の動きには気がついていない。教室の中でおれだけが幸彦を見ていた。

 

おれはわざと箸を落とした。教室の外に出て行った幸彦を追うために。でも前に座っていた朝日が「私洗って来るから座ってて」と言ってくれた。朝日も間違いなく、今良い女になっているはずだ。「ありがとう朝日、でも大丈夫だよ」と言って、おれは箸を持って幸彦を追いかけた。

 

幸彦は手洗い場にいた。おれはそっと幸彦の後ろに回り込んだ。

 

幸彦はコロッケを洗っていた。

 

おれは最初コロッケをたわしだと思った。

 

おれ「コロッケ洗ってるの?」

幸彦「うん。洗えば食べられる」

 

幸彦ははにかんでいたが、どこか居心地が悪そうな表情をしていた。

 

おれ「いや、無理だと思うよ」

幸彦「ほら、おいしいよ」

 

幸彦はじゃぶじゃぶになった重たそうなコロッケを食べていた。

 

おれ「まじで?」

 

小学生で語彙が少なかったおれには「まじで?」が精一杯だった。今なら多分「正気か?」と聞くことができただろう。今思えば、おれはその時に生まれて初めて人間の狂気を目の当たりにしたのだと思う。幸彦は二口でコロッケを手洗い場で食べきった。おれはお箸を洗いながら幸彦を見ていた。

 

幸彦と一緒に教室に戻った。席に着くと朝日が「おかえり」と言ってくれたのが、とても嬉しくて、ホッとした。

 

そうだ、トイレの話だった。おれが便座にトイレットペーパーを敷くようになったのはジムキャリーが映画の中でそうしているのを観たからだ。タイトルどころか、そのシーンしか覚えていない。もし誰か知っていたら教えて欲しい。

 

 

825日金曜日 晴れ。暑い。完全なる夏。

 

誰もいないトイレの電気がつきっぱなしになっていたので消した。一日一善。第66善。ごちそうさまでした。

 

今朝の体重74.9kg

朝 メンチカツパン

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昼 おいなりさんとプリングルス

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夜 ラーメン

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一日三膳。ごちそうさまでした。ラーメン食べるのに1時間並んだ。これも一つの狂気と言える。

(執筆時間54分)

 

 

幸彦のために「かっこいい男たち」というカテゴリーを追加した