一日一善と三膳

一日一善と三膳を通して世界とおれを幸せにする

お客さん、硬いですね

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昨日、頭痛がひどくて、これは肩の凝りからくるものなんじゃないのか?と疑い、マッサージへ行った。

 

担当してくれたのは50歳前後と見受けられる女性だった。帰り際に、名前を聞くと、レイです。水曜日はお休みしてます。と言っていた。

 

でも後からお店のホームページを見てみると、指名はできないらしい。女性のお客さんだけ、女性のマッサージ師さんに依頼できるとのこと。

 

レイさんがおれの肩に手をかけた時に、かすれた小さな声で「お客さん、硬いですね」と囁いた。おれはうつぶせのまま、顔をベッドの穴の空いた部分により深く挿しこみながら頷くのが精一杯だった。

 

おれはマッサージを受けるとき、眠りたくないと思っている。だって、もったいないじゃないか。せっかく気持ちが良いのに、眠ってしまっては、気持ちの良さを感じられない。

 

おれはいつも穴の下に腕時計を置いて、どれくらいの時間が過ぎているのか確認しながらマッサージを受ける。ああ、あと20分。ああ、あと10分。10分前になると、お店の用意しているタイマーがピピっと音を立てる。そして5分前になると、ピピ、ピピっと2回音が鳴る。

 

開始15分が経過した頃、ちょうどレイさんの腕がおれの肩甲骨を撫でてくれている時にふと思った。レイさんはいつもこうして誰かをマッサージしているけれど、一体誰がレイさんのことをマッサージするのだろうか?と。

 

ピピっ!

 

気がついたら、50分が経過していた。悔しかった。眠ってしまった自分があまりに情けなくて、泣きたくなったが大人なので我慢した。

 

おれはもしかしたらもう、マッサージなしでは生きていけない体になってしまったのかもしれない。

 

それにしてもレイさん「硬いですね」ではなくて「凝ってますね」という方が、日本語としては適切だと思います。無駄におれを興奮させないでください。どうか。

(執筆時間26分)